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原始仏典、中村元、中阿含経第五十六巻。「この法は知に赴かず」

教えを求めて尊者アーラーラ・カーラーマを訪ね、学んでいた釈迦族の王子シッダールタは言った。わたくしは尊者の説く法に達するのに、そう長い時間はかからずに済んだ。わたくしは、ただ唇を動かし、言葉をかたり、長老の知識をひとに解説する程度には、われは見知り、われは理解する。と、自他ともに認め、先生と呼ばれるほどになった。そこで王子シッダールタは問うた。「尊者アーラーラ・カーラーマよ、あなたはこの法を、みずから感じ実証し、どの程度にまで体現して、われらに告げて居られるのですか?」と。しかし、実にアーラーラ・カーラーマはこの法をただ信ずるだけで、われみずから知り、証し、体現している。とは告げてはいない。そのとき王子シッダールタは気付いた。この法は知に赴かず、正覚に赴かず、平安に赴かない。ただ知識を獲得し師弟を演じる具とするのみ。と。そこで彼はそれを尊重せず、そこを出で立ち去った。

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紡ぎ車と群れる力

ヒトという動物種が、地球上に生きる多くの他種の動物たちと、大きく異なっている点は何なのだろうか。家の周辺に生きている雀やカラスを見ても、仲間が居て、巣を作り・・・そこらの小さな蜂でさえ、食物を得るために真面目に飛び回って、自分の子供を大切に育て・・・、何かヒトと違っている点が有るのだろうか。ヒトは言葉をしゃべると言っても、それは、鳥たちとは鳴き声が違う程度の事で、差は、ほとんど無いのではと思えるほどに、命有る者は良く似ている。
いつか、まだ目も開かない、裸の雀の子が巣から落ちて、子も親も大きな声で鳴いているので、拾って羊毛にくるめて、暖めてやった。巣は高い所で、もどしてやれないので、ペットショップから餌を買って来て、会社の事務の人の机に置いて、10分ごとに餌やりを頼んで、育ててもらった事があった。裸の子雀は数日で全身に毛が生えて来た。

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「アナンダの紡ぎの本」今年中の出版に挑戦!

アナンダが訳して出版した「アシフォードの紡ぎの本」が、数年前に売り切れた。再版の希望も多かったが、しなかった。それは、その本には「紡毛糸」の記載が無く、紡ぎを楽しもうと言うのに、大事な紡毛糸のページが無い「紡ぎの本」は、今では考えられない事。問い合わせには、すぐにアナンダの紡ぎの本を出すから、とは言ったものの、出せないまま年月は過ぎて久しい。自由に紡げるようになる独習本の範囲なら出せるのだが、時代は今、単なる技術を超えた内容の紡ぎの本を求めて居る。その内容は伝えるに困難。だが、経験を活かした紡ぎの独習本に加えて、今こそ、その伝えるに困難な内容に、挑戦すべき時だと思う。

前書き:「紡ぎ車は暮らしの道具」 かつて家庭にミシンや自転車が普及した様に、いつか、紡ぎ車が一般に広まり、紡いでいる姿が普通に見られるようになる。と、アナンダは信じている。が、ほとんどの人は、まさか、と思っている。

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消えたクレヨンの話し。

宮崎県の延岡市は化学工場があったので、米軍の空爆で全部焼かれた。私の一家は延岡から父の曾祖母の出里、高千穂の近くの村に逃げた。村外れに農家の作業小屋「田小屋」を借りてしばらく住み、その村はずれに竹屋根の家を建てて子供7人の一家9人は住みついた。私の現世の記憶はそこで始まった。幼いその頃の記憶。いつも一緒だった兄と、その日も一緒に、兄の友達に誘われて、なぜかその日は普段あまり遊ばない、小柄な兄妹の家に行った。小さな藁葺きの農家の暗い土間に入ると、奥に明るい所が有って、その兄妹は小さな紙切れに、ごしごし色を塗りながら、明るくはしゃぐ声で、皆で、絵を描こうと言った。そこに有った、汚れたクレヨンの箱と半分ほどにまで短くなったクレヨンを見ると、兄も私も大変に驚き戸惑った。兄は苦しそうに「ああ、ここに有ったあ」とうめく様に言い、私は横で無言。・・・

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近代技術の中での「暮らしと紡ぎ車」(2)

近代化と個人性の喪失
近代技術は作業の徹底的な分割で生産効率を上げ、大量生産が始まり世界を大きく変えた。英国で産業革命が起こり、植民地主義が原料産出国を統治し始め、必然的に軍備拡大、造船産業、帝国主義がはびこり、支配国、被支配国の国民差別思想の時代が始まった。支配された国の人々は奴隷的労働を強いられた上に、原料の作物を搾取され、製品を売りつけられて貧困と差別に苦しんだ。植民地主義は世界中を徐々に大きな戦争に巻き込んでいった。日本にも黒い軍艦が開国を迫り、近代化の波が押し寄せて来た。日本政府は欧米に植民統治される危険を排して、その植民統治する側に立つべく西洋人に猿と言われても真似て産業、軍事、教育などの近代化を急いだ。

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